
ユニバーサルCEOが語る音楽業界とAIの未来
ユニバーサルミュージックのルシアン・グレンジCEOが語った言葉が、業界に静かな波紋を広げている。テーマはAI、Spotify、そして「ファンクショナルミュージック(機能的音楽)」。最後のひとつが、なかなか刺さる。
グレンジCEOは、自分たちは「機能的音楽」の産業にいるのではないと語った。ここでいう機能的音楽とは、作業中の集中BGMや睡眠導入用サウンドのような、目的を果たすために存在する音のこと。AIが量産しやすく、Spotifyにも大量に流れ込んでいるジャンルだ。じゃあ何が作品なんだ、という話になる。グレンジCEOの立場は明確で、人間のクリエイターが生み出す感情や物語のある音楽こそが、ユニバーサルが守り育てるべき「音楽」だということだろう。
AI音楽を制作している人間にとって、これは他人事ではない。世界最大の音楽レーベルのトップが「AIと共存する」のか「AIと対峙する」のかを定義しようとしている瞬間だからだ。グレンジCEOの発言がそのまま規制や契約の方向性に反映されるかどうかはわからない。でも、業界の空気がどこへ向かっているかを測る上では、これ以上ない発言源だとうちは思っている。
Spotifyへの言及も興味深い。具体的な内容は明かされていないが、ストリーミングプラットフォームとレーベルの間にある緊張感は、AI楽曲の分配や収益化のルール整備と無縁ではない。誰が再生されて、誰に金が落ちるのか。その設計図を誰が引くのかという問いに、グレンジCEOは自分たちが関わり続けると言外に示している。
うちの見立てを言うと、このスタンスは「AIを敵視している」というよりも「定義を握る側でいたい」という意思表示に見える。機能的音楽とアーティスト音楽を切り分けることで、AIが得意な領域と人間が守る領域を分けて管理しようとする実利的な戦略だ。綺麗事だけではなく、ビジネスとして成立させようとしている。それは素直に注目に値する。
ただ、その「定義」を誰が決めるのかという問いは残る。グレンジCEOが線を引けば、その線の外に置かれる音楽も当然出てくる。AIで作る側は、自分の音楽がどちら側に立っているのかを、そろそろ自分なりに整理しておく必要があるかもしれない。
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