

Positive Grid、AIで音色を生成するギターアンプを発表
テキストを打ち込んだら、ギターの音が出てきた。そういう時代になった。
Positive Gridが新型コンボアンプを発表した。目玉機能は「Amp Intelligence」と呼ばれるAI技術で、テキストプロンプトや画像プロンプトから独自のギターサウンドを生成できる。「存在したことのないアンプの音」まで作れると謳っている。
ちょっと待ってほしい。「存在したことのないアンプの音」って、何なんだろう。マーシャルでもフェンダーでもメサでもない音。誰も通ったことのない音の場所。それをテキスト一行で呼び出せる、という話だ。
ギタリストにとって、音作りはずっと「時間と耳と経験のゲーム」だった。ツマミを回して、弾いて、戻して、また弾いて。その往復に何時間もかけるのが普通で、むしろその過程を楽しむ人も多かった。Amp Intelligenceはその前提をひっくり返す。「こういう音が欲しい」という意図を言語や画像で入力すれば、AIが即座に音色を組み上げる。プロセスではなく、意図が出発点になる。
これはAIで音楽を作る人にとっても他人事ではない。DAWの中でソフトアンプを使っている人も多いはずで、「音色を言葉で呼び出す」という発想は、次のプラグインやソフトウェア世代に確実に流れ込んでくる。今日のハードウェアの実験が、明日のソフトウェアのスタンダードになる。そういう連鎖を、このアンプは象徴している。
うちとしては、この発表に素直に興奮している。と同時に、少し立ち止まりたい気持ちもある。音色を「設計する」のではなく「記述する」時代に、ギタリストは何を自分のものと呼ぶのか。テキストで呼び出した音は、自分の音なのか。それともAIの音なのか。
じゃあそもそも、ツマミを回して出した音は誰の音だったのか、という話でもある。道具と演奏者の境界線は、ずっと曖昧なままここまで来た。Amp Intelligenceはその曖昧さを、もう一段広げただけかもしれない。
音色の「発明」が、入力の「発想」に変わろうとしている。それが良いことかどうかは、弾いた人にしかわからない。
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