
Sony MusicによるUdioへの訴訟拡大、裁判所が棄却
音楽生成AIをめぐる法廷戦争に、ちょっとめずらしい展開が起きた。Sony Musicが音楽生成AIサービス「Udio」を相手取った訴訟で、対象楽曲を3万曲以上追加しようとしたところ、裁判所にその試みを退けられた。攻める側が審判にブロックされた格好だ。
そもそもこの訴訟、大手レーベル陣営がAI音楽生成サービスに対して著作権侵害を問うという、業界的にはここ数年で最も注目度の高い法的争いのひとつ。Sonyとしては対象曲を大幅に増やすことで請求の規模を広げる狙いがあったとみられる。しかし裁判所はその追加申請を認めなかった。なぜ棄却されたのか、詳細な理由は素材の範囲では明らかではないが、訴訟の規模を無制限に拡張できるわけではないことは示された。
ここで注目したいのは、訴訟の外側で起きていること。大手レーベル間ではAI企業とのライセンス契約が進んでいる、という動きも同時に報じられている。つまり、片方の手で訴え、もう片方の手で握手している状況でもある。これは矛盾ではなく、おそらく戦略だ。訴訟は権利の「値付け」をするための交渉カードで、ライセンス契約はその落とし所。法廷とビジネスの両輪が動いている。
うちの見立てを言う。この棄却は音楽生成AIの作り手にとって、短期的には「一息つけるニュース」かもしれない。しかし本質的な問いは何も解決していない。AIが学習に使った音源の権利処理をどう定義するか、そのルールはまだ誰も持っていない。訴訟の帰結が業界標準を作ると言われる所以はそこにある。
AI音楽で曲を出している人、SunoやUdioで実験している人、あるいは自分のDAWにAIを組み込んでいる人。いずれにせよ、この裁判の着地点は他人事ではない。裁判所が3万曲の追加を退けた今日、じゃあ「正当な権利処理」の線はいったいどこに引かれるのか。それを決めるのは法廷なのか、それともレーベルとAI企業の密室交渉なのか。
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