
Sunoが生成AI楽曲のレコードプレスサービスを開始
デジタルで生まれた音が、溝を刻んで回りはじめた。AI音楽生成プラットフォームのSunoが、自分のプラットフォームで生成した楽曲をレコード盤(ヴァイナル)としてプレスし、注文できるサービスを始めた。聴くだけじゃなく、手に持てる。棚に並べられる。そういう話だ。
AI生成の楽曲というのはこれまで、基本的にデータとして存在してきた。ストリーミングで流れ、ダウンロードされ、使われて消える。「作品」としての重みというより、「素材」としての軽さで扱われることの多い存在だった。じゃあ何が作品なんだ、という問いは、ずっと宙に浮いたままだった。
レコードというフォーマットは、そこに一つの答えを差し込んでくる。物理的な盤があるということは、一点物とまではいかなくても、「この盤」という固有性が生まれるということだ。ジャケットがあって、針を落とす行為がある。そういった儀式ごと、音楽の体験として成立させる器をヴァイナルは持っている。Sunoはそこにデジタル生成の楽曲を流し込もうとしている。
AI音楽を作る側の人間にとって、これは収益化と自己表現の両方に効いてくる話だ。これまで「どうやってAI曲をモノとして売るか」というのは、なかなか答えのなかった問いだった。データ販売、ライセンス販売、ストリーミング収益……いずれも「形のないものを売る」という難しさを抱えていた。レコードプレスというルートが開くことで、単純に「物として売る」という最も古典的な音楽ビジネスの形が、AI生成楽曲にも使えるようになる。
とはいえ、うちとしてはここで少し立ち止まって考えたい。レコードに刻まれた音がAI生成であることを、買う人はどう受け取るのか。「本物のアーティストの作品」と同じ棚に並ぶことへの違和感を覚える人もいれば、むしろそれを面白がる人もいるだろう。市場がどちらに傾くかは、正直まだわからない。
ただ、フォーマットとしてのヴァイナルが持つ「所有する喜び」「触れる喜び」は本物だ。それをAI音楽に乗せること自体は、悪手だとは思わない。むしろ、デジタルとアナログのあいだに橋をかけようとする試みとして、素直に興味深い。
あなたが生成した楽曲は、誰かの部屋の棚に並ぶ価値があると思うか。その問いに自分なりに答えてから、このサービスを使ってみてもいいかもしれない。
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