

FenderのStudio ProがMoisesのAI音源分離機能を統合
「AIは目的地じゃない。音楽を作ることが目的だ」。これはFenderがStudio Proの新アップデートを発表した際に添えた言葉だ。ギターメーカーとして知られるFenderが手がけるDAW、Studio Pro。そこにMoisesのAI音源分離技術と、スマートスタジオアシスタントが組み込まれた。
Moisesといえば、音楽ファイルをボーカル・ドラム・ベース・その他のパートに切り分けるAI音源分離ツールとして知られている。それがDAWに直接入ってくる、というのが今回の話の肝だ。これまでは「いったんMoisesでステム分離して、それをDAWに読み込んで……」という手順を踏む必要があった。それがStudio Pro内で完結するようになる。地味に見えて、制作の流れを大きく変える一手だと思う。
たとえばリファレンス曲のドラムパターンだけ取り出したいとき。あるいはサンプリング素材を掘っていて「このベースラインだけほしい」と感じたとき。外部ツールへの往復がなくなるだけで、集中力が途切れるタイミングがひとつ消える。創作の文脈でいえば、「考えながら手を動かせる」状態を保てる時間が増える。それは小さいようで、じつはかなりでかい。
スマートアシスタントの詳細はまだ多くが明かされていないが、DAW上での制作をガイドしたり補助したりする機能として位置づけられているようだ。AIが「作品を代わりに作る」のではなく、「作る人を支える」方向に振り切っているのが、冒頭の発言とも重なる。
うちとしては、この方向性には素直に好感を持っている。音楽制作へのAI実装が「自動生成」一辺倒になりがちな時流の中で、「ワークフローの改善」に焦点を当てるのは誠実な選択だ。ただ一点、気になることがある。音源分離の精度が実際どこまで仕上がっているのか、現時点ではわからない。Moisesの技術は評価されているとはいえ、DAWとの統合で同等のクオリティが出るかどうかは使ってみないと判断できない。
「AIは目的地じゃない」と言えるDAWが、どんな音楽を作らせてくれるのか。道具の哲学が問われる時代に、Fenderはその答えをコードと波形で見せようとしている。あなたの制作フローに、この一手は刺さるだろうか。
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