
HYBEの2025年サステナビリティ報告書に見るAI活用戦略
K-POPの巨人、HYBEが動いた。2025年のサステナビリティ報告書の中に、AIをどう使い、どう管理するかという方針が盛り込まれた。ライブエンタメから権利保護まで、大手レーベルがAIをどう「制度の内側」に取り込もうとしているのかが、じわじわ見えてきている。
Music Business Worldwideが報じた内容によると、HYBEの報告書にはいくつかの注目点が含まれている。コンサート会場での顔認証技術の導入、そして偽造グッズへの対策強化。これらはどちらも、AI・テクノロジーを「ファンの体験」と「権利の保護」という二つの軸で活用しようとする姿勢の表れだ。
ここで少し立ち止まって考えてみたい。顔認証とグッズ対策、一見バラバラに見える話が、実はひとつの線で繋がっている。「本物を守る」という意志だ。誰がそのライブに入るべきか、どのグッズが正規品か。どちらも「正しい状態を定義して、それ以外を排除する」技術の話である。そしてAIは、その判断を自動化する役割を担いつつある。
AI音楽制作に取り組むクリエイターにとって、これは対岸の火事ではない。大手レーベルがAIを「業務効率化のツール」としてだけでなく、「権利保護の武器」として整備し始めたとき、その基準やルールがやがて業界全体の標準になっていく可能性がある。誰が何を「本物」と定義するのか、その主導権をどこが握るのかという問いは、制作環境の違いを超えて、すべての音楽クリエイターに関わる話だ。
うちの正直な見立てを言うと、HYBEのこうした動きは「先手を打った」という印象が強い。サステナビリティ報告書という枠でAI活用方針を開示するのは、ESGへの対応という側面もあるが、それ以上に「我々はAIをちゃんとコントロールしています」というメッセージを外部に向けて発する意図を感じる。規制の議論が各国で進む中、大手が自主的なガバナンスの形を示すことには、それなりの意味がある。
ただ、気になることもある。顔認証の導入は、ファンのプライバシーとのトレードオフだ。利便性と安全性を担保する技術が、同時にどれだけの個人データを蓄積するのか。報告書でその点がどこまで丁寧に語られているかは、引き続き注視する必要がある。
結局のところ、AIが「作る道具」から「管理する仕組み」へと役割を広げていくとき、音楽の現場で何が変わり、何が変わらないのか。HYBEの報告書は、その問いの輪郭をくっきりさせてくれる一枚の地図かもしれない。
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