

カニエ・ウェストのAI使用疑惑と未払い賃金訴訟
カニエ・ウェストの楽曲制作にAIが使われていた、とプロデューサーが主張している。しかも、その報酬が約2年間にわたって支払われていないとして、訴訟にまで発展した。MusicRadarが伝えたこのニュース、AI音楽界隈にとっては他人事では済まない話だ。
プロデューサーが問題にしているのは「Bully」という楽曲における制作関与と、それに対する未払いの賃金。訴状の中には「約2年にわたる要求にもかかわらず、被告は報酬の支払いを拒否し続けている」という文言まで登場する。AI使用の有無と、賃金の不払いという二つの問題が同時に浮上している格好だ。
ここで少し立ち止まって考えたい。AIが制作プロセスに入ってくると、「誰が何をつくったのか」という問いが途端にぼやける。人間が作ったのか、AIが作ったのか、あるいはその両方なのか。じゃあ報酬は誰に、どれだけ支払われるべきなのか。今回の訴訟は、まさにそのぼやけた部分が法廷に持ち込まれた事例だといえる。
AIツールを使った楽曲制作が日常になりつつある今、制作の現場では「AIを使ったから手間が減った」と見なされるリスクが生まれている。ツールが変わっても、人間のクリエイティブな判断や試行錯誤の価値は変わらないはずだ。しかし、それを証明するのは簡単ではない。
うちの見立てを言えば、この訴訟の本質はカニエ個人の話ではなく、業界全体に向けた問いかけだと思っている。AIが制作に絡んだとき、既存の「報酬の払い方」は果たして機能するのか。契約書に「AIの使用有無」を明記する慣行が業界に根づいていないなら、こういうトラブルはこれからも続くだろう。
自分がAIを使って楽曲を作るとき、あるいは誰かと共同で制作するとき、「これは誰の仕事か」という定義を最初に決めているだろうか。大きな名前のついた訴訟が、小さな現場への問いを投げかけている。
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